【社労士が解説】産前休暇と有給休暇の違いとは?

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日本社会が抱える大きな問題として、少子高齢化と女性の社会進出の推進があります。
女性の労働力率は結婚、出産期の年齢層になると一度低下し、育児がひと段落する時期から再び上昇する、いわゆるM字カーブを描きます。
この記事では、これらの問題解決のひとつとして制定されている産前産後休業について解説します。
▼目次
産前休業、正確には産前産後休業とはどのような休業なのか
出産に係る給付金について
少子高齢化、特に少子化に対しての打開策として、同時に女性の社会進出を推進するため、M字カーブを描く原因である、出産、育児の際に退職を選択しなくて済むようにする必要があります。
略称として言われる「産休」は、正確な名称は「産前産後休業」です。産前産後休業の目的は母体保護とされています。
産前産後休業を活用して休業することは、労働基準法上女性の労働者の権利として認められた権利です。
これに加えて、産前産後休業期間を対象として支払われる出産手当金は、休業期間中の所得補償を目的として、健康保険法などの公的医療保険により支給されます。
産前産後休業の期間
産前産後休業について詳しく解説をすると、まず休業に係る期間は、出産予定日を基準として決定されます。
出産日予定日を含んだ産前期間の42日(6週)と出産予定日の翌日から56日(8週)が産後期間として休業期間です。ただし、産前休業の期間は双子などの多胎妊娠の場合は98日(14週)とされます。
産前産後期間については、実際の出産日により、変更される場合があります。どのように変更されるかは、以下のとおりです。
- 予定日どおりに出産した場合:当初の予定どおりの期間を産前産後期間とします。
- 予定日より前日に出産した場合:実際の出産日を基準として出産以前42日産後56日と変更した期間を産前産後期間とします。
- 予定日を超えた日に出産した場合:出産以前の休業は、出産予定日による休業開始日をそのまま使用し、実際の出産日までを産前休業の期間とします。産後休業の期間は、出産日後56日までの期間とします。
支給される出産手当金の金額
次に支給される出産手当金の金額について解説します。この出産手当金は1日当たりの額で算定され、その額は次のように計算します。
「支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」
つまり、概算額として、時間外労働等の割増賃金を除いた給与額の2/3を約3か月間(98日間)健康保険から受給できると考えることができます。
出産手当金に関わる税金と注意点
また、金銭面として、直接の支給金額以外にも産前産後休業期間中は、健康保険と厚生年金の保険料、いわゆる社会保険の保険料が請求をすることで全額免除されます。また、その他出産手当金に対しては非課税とされています。
出産手当金についての注意点として、実際の出産手当金を請求する時期があります。出産手当金は原則として請求に係る事務手続きをおこなうのは、産前産後休業期間が終了した日後、つまり休業の開始日と終了日が確定した後となります。例外として、会社側に請求することで、産後休業終了前に複数回に分けて、すでに経過した日分の出産手当金を請求することができます。
年次有給休暇とはどのような休暇なのか
年次有給休暇の特徴について
- 年次有給休暇を使用するときの扱い
年次有給休暇は、労働基準法を根拠とした休業です。年次有給休暇を請求すると、その指定日における労働義務が消滅します。
ただし、年次有給休暇の名のとおり、指定日の賃金請求権は発生することになり、給与の基礎に含まれます。年次有給休暇の行使によるその指定日の賃金額は次のとおりです。
- 1、平均賃金
- 2、所定労働時間働いた場合の通常の賃金
- 3、健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する額
あらかじめ就業規則により、1又は2を選択し、年次有給休暇を取得した際の取り扱いを決めておく必要があります。あるいは労使協定に定めることで、3を選択することもできます。
年次有給休暇に係わる給与は、会社から支給される賃金ですので、給与支払い日に支給されます。
また、金銭面として、年次有給休暇に係わる賃金は、通常の賃金と同様の扱いとされるため、社会保険の保険料計算の基礎に含まれることはもちろん、その他課税の対象とされています。
年次有給休暇で注意が必要なこととして、計画的付与制度があります。平成31年4月から施行された、年5日の年次有給休暇取得義務に対して、年次有給休暇の確実な取得のため、年次有給休暇の計画的付与が注目されています。
計画的付与は、あらかじめ年次有給休暇の取得日を一定の日数分決めてしまうことで、年次有給休暇の確実な取得を促進するための制度です。
すでに決定された計画的付与による年次有給休暇の指定日が産前産後休業期間中にある場合、その指定日は年次有給休暇として扱われます。
そのため、産前産後休業開始前に会社と計画的付与の指定日とその扱いについて確認しておくことをおすすめします。
産前産後休業と年次有給休暇の関係について
産前産後休業と年次有給休暇の取得についての比較
はたして産前産後休業と年次有給休暇は、どのような関係にあるでしょうか。
金額面での比較は前項のとおり年次有給休暇を取得する方が高額になる可能性が高いと考えることができます。
しかし、産前産後休業期間の性質上、産前産後休業期間中は労働義務が消滅します。つまり、年次有給休暇を請求できる根拠がなくなります。
逆に年次有給休暇の取得をするのであれば、指定日を産前産後休業の日とすることができません。つまり、出産手当金と年次有給休暇に係る賃金の両方取りはできません。
では、出産手当金と年次有給休暇を交互に混合して取得することは可能かを検討します。
産前休業の期間であれば労働者本人が選択することで、産前休業ではなく年次有給休暇とすることができます。
ただし産前産後休業期間の請求の有無によらず、産後の8週については労働基準法により、就労禁止とされています。
そのため、原則として年次有給休暇の請求ができないため、産後休業を選択することになります。
例外として、産後6週を経過した女性が請求し、さらに、医師が支障ないと認めた業務について就業させることは認められています。
そのため、この手続きをおこなった上で、この期間を指定して年次有給休暇を請求できる可能性はあります。
ただし、出産日がずれた場合は、産前産後休業期間にもずれが出ることが考えられます。つまり、年次有給休暇は取得日を指定する必要があるため、出産という事柄には柔軟な対応ができる制度とはなっていため、現実的な方法ではありません。
また、産前産後休業期間について制度上、その期間の途中に年次有給休暇等により賃金が発生した場合、出産手当金の額が調製されてしまうので、交互に産前産後休業と年次有給休暇を都合に合わせて取得するということは得策とは言えません。
あえて年次有給休暇を取得するのであれば、産前期間の早期に取得するのであれば、出産予定日と実際の出産日とでずれがあっても、影響は小さいと考えられます。
出産を機に退職をする場合の出産手当金と年次有給休暇について
退職を選択肢に入れた場合の考え方
これまでは、出産後に復職することを視野に入れた場合の話題でした。
ここでは産前産後休業と年次有給休暇という話題から少し逸脱しますが、出産を機に退職する場合には、年次有給休暇や出産手当金がどのように扱われるのかについて解説します。
まず、年次有給休暇では、そもそも会社に在籍していることが年次有給休暇取得の前提です。そのため、退職日後は年次有給休暇が消滅してしまいます。
一方で、産前産後休業に係る出産手当金も、原則は支給されません。ただし、出産手当金については次の要件を満たす場合、継続して受給することが可能になりますので、退職を検討されている場合は注意が必要です。
- 退職日まで健康保険の被保険者期間が1年以上継続してあること。
- 退職日までに出産手当金を受けている、あるいは受けられる状態であること(産前休業期間に該当する期間に健康保険の被保険者資格を持った状態でいること)
- 退職日に出勤していないこと(年次有給休暇を取得し、休業している場合は本要件に該当します。)
ただし、会社に在籍している状態と違う点がありますので、注意が必要です。それは、会社在籍時は、会社側が申請手続きをしてくれることが多いですが、退職後では申請手続きを自身でおこなう必要があるということです。
出産から育児へと多忙な時期ではありますが、出産手当金の申請には時効がありますので、忘れずに申請しましょう。時効はそれぞれ休業に該当する日の翌日から起算して2年です。
まとめ
産前産後休業と年次有給休暇の取得について単に支給される金額だけで見ると、年次有給休暇の方が有利に見えます。
一方で、出産手当金は、制度上出産に対してのライフスタイルに適切に対応することを考慮したものとなっています。
その他に、産前産後休業を請求することで、社会保険料の免除となることや出産手当金が非課税として取り扱われるなど支給金額からは見えにくいメリットもあります。
このふたつの休業は性質が全く異なるため、両立することが不可能で、どちらか一方を選択する必要があります。
未消化の年次有給休暇を時効消滅させないため、あるいは支給金額の多寡など、年次有給休暇の取得を検討する理由は個人毎に異なるため、一概に最善策をあげることはできません。
出産、育児、職場復帰後の予定をしっかりと計画し、その上で家族、会社とよく相談されて、納得のいく出産とされることをおすすめします。
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