今注目の「変形労働時間制」とは?社労士がわかりやすく解説

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従来の労働時間の定め方では、解決が困難な、時間外労働の削減に対して、働き方改革により、罰則付きの時間外労働の上限規制も導入されることになりました。これにより、労働時間の適正化への対応が求められています。この記事では、時間外労働時間の削減に向けた変形労働時間制について解説します。
教員をはじめとする、長時間労働を改善するためには
働き方改革による罰則付き時間外労働規制と長時間労働改善
長時間労働の一例として、教員の働き方改革推進が挙げられ、労働時間を年単位で管理する「変形労働時間制」の導入を柱として、教職員給与特別措置法(給特法)の改正案が、自民党の文部科学部会で了承されました。
導入の背景は教員の長時間労働問題があります。文科省の調査によると、中学校教員の約6割、小学校教員の約3割の残業時間が、「過労死ライン」の目安と言われる、月80時間超となりました。
この改正により、2021年4月より、地方公共団体の判断で1年単位の変形労働時間制を導入できるようになります。
これにより、児童生徒が長期休業となる期間に合わせ、休日のまとめ取りなどが可能な体制が作れるようになりました。学校における働き方改革を推進する方策として期待が持たれています。
変形労働時間制とはどのようなものか
1か月単位の変形労働時間制とは
1か月単位の変形労働時間制とは、どのようなものでしょうか。
1か月以内の一定期間を平均して、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
1か月単位の変形労働時間制の採用にあたって、労使協定又は就業規則その他これに準じるものにおいて、次のことを定める必要があります。
- 変形期間を1か月以内とすること
- 変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内とすること
- 各日各週の労働時間を特定すること
1か月単位の変形労働時間制の時間外労働時間は以下のようにして求めます。
1日分
所定労働時間が8時間を超える日は、所定労働時間を超えた分の時間、所定労働時間が8時間以内の日は、8時間を超えた時間分が時間外労働時間となります。
1週の分
所定労働時間が週40時間を超える週については、所定労働時間を超えた時間分が時間外労働時間となります。
週所定労働時間が40時間以内の場合、40時間を超えた分が時間外労働時間となります。ただし、1日分の時間外労働時間として算定した分は、計算から除きます。
変形期間全体分
「40時間×変形期間の暦日数÷7」の式から求められる、変形期間における法定労働時間の上限を超えた分が時間外労働となります。ただし、1日分、1週分の時間外労働時間として算定した分は、計算から除きます。
1か月単位の変形労働時間制のメリットは例えば、月初は比較的忙しく、月末には業務が減少するような事業所において不要な時間外労働が生じることを避けることができます。
そのため、会社側としては割増賃金を抑制し、労働者側としても、不要な拘束時間を減らし、ワークライフバランスの向上が期待されます。
これ以外に、制度上、特定措置事業場に該当する場合、法定労働時間44時間のまま運用できることもメリットとなります。
一方でデメリットは、本制度運用上、労働日、労働時間を配分する事務的負担があるほか、各日各週の労働日や労働時間を決める点にあります。
そのため、急な時間外労働や休日労働などに際し、そのような日分は通常の1日8時間、週40時間の原則で割増賃金の計算が必要になります。結果として業務の柔軟性が減り、事務負担が増えることが挙げられます。
1年単位の変形労働時間制とは
1年単位の変形労働時間制とは、どのようなものでしょうか。
業務に繁閑のある事業場で繁忙期に長時間労働を割り振り、閑散期については短い労働時間を割り振ることで効率的な労働時間とすることで、年間の総労働時間を適正なものとすることを目的としています。
1か月を超え1年以内の一定期間を平均し、1週間の労働時間を40時間以下の範囲にした場合、特定の日や週に対して1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
1年単位の変形労働時間制の採用にあたって、労使協定を締結し、就業規則その他これに準じるものにおいて、次のことを定め、労働基準監督署に届出る必要があります。
- 対象労働者の範囲
- 対象期間(1か月を超え1年以内の期間)及び起算日
- 特定期間
- 労働日及び労働日毎の労働時間
- 労使協定の有効期間
さらに1年単位の変形労働時間制では、過度な労働を防ぐため、次のような制限があります。
- 対象期間を平均して週労働時間は40時間以内とする
- 連続した労働日は6日までとすること。ただし、特定期間がある場合、最長12日
- 1日の労働時間は10時間を最長とすること。ただし、隔日勤務のタクシー運転手は16時間とする
- 週当たりの労働時間は最長52時間とすること
- 対象期間が3か月を超える場合、週労働時間が48時間を超える週の初日の数は3以下とすること
- 1年間の労働日数は280日を上限とすること。ただし、対象期間が3か月以内の場合を除く
1年単位の非定型的変形労働時間制の具体例
1年単位の変形労働時間制の時間外労働時間は以下のようにして求めます。
1日分、1週分、対象期間分それぞれの時間外労働時間を加えたものが、1年単位の変形労働時間制とします。1日分、1週分は、1か月単位の変形労働時間制のものと同様に計算します。対象期間分については、1年単位の変形労働時間制では、次のように計算します。
「40時間×対象期間の暦日数÷7」この式から求められる、変形期間における法定労働時間の上限を超えた分が時間外労働となります。ただし、1日分、1週分の時間外労働時間として算定した分は、計算から除きます。
1年単位の非定型的変形労働時間制のメリット・デメリット
1年単位の変形労働時間制のメリットは以下のようなものがあります。
例えば、教員のように児童生徒が長期の休業がある事業、小売業のように、年末年始商戦やクリスマスなど、繁忙期と閑散期の波が大きい事業や会社内でも経理など、月毎で定期的に繁閑がある事業などは1年単位の変形労働時間制が運用しやすい業務と言えるでしょう。
一方デメリットは、途中での労働時間の変更や中止が難しいということです。不要不急の業務を避け、時間を大切な資源として考えることが重要になる制度と言えるでしょう。
1週間単位の変形労働時間制とは
1週間単位の非定型的変形労働時間制とはどのようなものでしょうか。
1週間単位の非定型的変形労働時間制とは下記の事業所において、労使協定により、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができる制度です。
1週間単位の否定形的変形労働時間制は上記の2つと比べ、導入できる事業所に別途要件が次のように定められています。
- 小売業、旅館、料理店、飲食店の事業で常時使用する労働者数が30人未満の事業所
- 次の2点を労使協定に定め、労働基準監督署に届出ること
1.1週間の所定労働時間が40時間以下とすること
2.1日の労働時間の限度を10時間とすること - 1週間各日の労働時間をその1週間の始まる前までに労働者に書面で通知すること
1週間単位の非定型的変形労働時間制の具体例
1週間単位の非定型的変形労働時間制では、法定の時間外労働時間は次のようになります。
1日としては、事前の所定労働時間が8時間を超える日は、その所定労働時間を超える時間を時間外労働時間とします。事前の所定労働時間」が8時間以内の日は、8時間を超えた時間とします。
1週間としては、40時間を超える時間を時間外労働時間とします。ただし、1日の時間外労働時間として取り扱った時間は除きます。例えば、月曜日から土曜日まで週6日出勤で、1日7時間労働した場合の6日×7時間=42時間の2時間分が時間外労働時間となります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制のメリット・デメリット
会社にとってのメリットは割増賃金の削減です。
特に当該の事業所では、人手が足りていても、所定労働時間が終わりとなるまでは労働義務が生じ、手持ち無沙汰となることもあり、逆に忙しい日には業務が終わらず、割増賃金がかさんでいくことを避けられます。
デメリットは割増賃金の計算の煩雑化はもちろん、制度の対象となる小規模事業所としては、各週各日の労働時間を割り振り、書面で通知することは事務的な負担も考えられます。
労働者のメリットとして、拘束時間の削減によりワークライフバランスの改善が考えられます。
1週間単位の非定型的変形労働時間制導入についての注意点として、制度該当事業所で特に労働者が10人未満の場合、その事業所は特定措置事業場(法定労働時間を1日8時間、週44時間とすることができる事業場)である場合が考えられます。
そのため1週間単位の非定型的変形労働時間制導入の場合と、特定措置事業場として扱う場合とを比較する必要があります。
それぞれの変形労働時間制の活用例について
それぞれの変形労働時間制は、どのような業種、事業所で活用されるでしょうか。
まず、1か月単位の変形労働時間制の恩恵を受けやすい業種・事業場は、給与計算のように月内の一定期間が忙しくなる事業場です。月末は比較的忙しく、月初は業務が減少するような月内での繁閑が激しい事業所が考えられます。
また、小売業や飲食業、宿泊業などの特定措置事業場に該当する事業場では、法定労働時間44時間のまま運用できることもメリットとなります。
次に1年単位の変形労働時間制の恩恵を受けやすい業種、事業場は、デパートのように、年末年始商戦やクリスマスなど、1か月以上の期間で繁忙期と閑散期の波がある事業です。
同様の理由でアイスクリームなどのように季節に影響を受ける製造業や会社内でも経理など、決算を扱う事業などは1年単位の変形労働時間制が運用しやすい業務と言えるでしょう。
最後に1週間単位の否定形的変形労働時間制の恩恵を受けやすい業種、事業場ですが、この制度では小売業、旅館、料理店、飲食店等の事業で常時使用する労働者数が30人未満の事業所と対象事業場に絞られています。
その中でも、天気その他予測が困難な理由により繁閑が変化する事業場が考えられます。例えば、ビアガーデンのある飲食店などが挙げられます。
まとめ
変形労働時間制は、正しく理解され、適切な事業場に導入されれば、会社側、労働者側ともにメリットが受けられます。しかし、会社側の都合のみで労働時間の配分を可能とすると、過剰労働の懸念が付きまといます。
そのため、あらかじめ労働日や労働時間を決め、これを変更することは原則として認められていません。さらに、変更した場合にはその日を制度上の労働時間の計算から除き、別途時間外労働の労働時間として算出するなど、会社側の負担も大きくなります。
名目上の割増賃金削減のために安直に変形労働時間制を導入することは会社にとって、デメリットでしかないことも念頭に入れて検討されることをおすすめします。
参考:
厚生労働省「働き方改革特設サイト」
厚生労働省「週40時間労働制の実現1か月又は1年単位の変形労働時間制」
厚生労働省「1年単位の変形労働時間制」
東京労働局「1年単位の変形労働時間制導入の手引き」
徳島労働局「変形労働時間制」
愛知労働局「1週間単位の非定型的変形労働時間制」
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